TTosChapter 13:悪魔の鉄槌

シーガルマンロゴ

The Trial of Seagullman

Chapter 13:悪魔の鉄槌

 一方、主任はハイテンションに片足を突っ込む勢いの田仲に対し、一瞬意表を突かれた様子であったものの、すぐに切り替えて答えた。

「…あっそう。ごくろーさん。」

 主任に『報告』を終えた田仲は一見はつらつとした印象である。

「…ありがとうございます!…それで、これで解放してもらえますよね?」

しかし、その目の焦点は何処にもあっていない。

 主任は田仲の姿を見てため息をついた。だが、田仲は主任の様子から異変を感じることはできなかった。

「田仲さん。何を勘違いしてるんだか知らんけど、アンタもうここから出られないよ?」

 主任は、まるで余命いくばくもない患者に、ありのままの真実を宣告する医師のようなトーンでそう言った。

「え?」

田仲の表情は笑顔のまま固まった。変わらず目はうつろである。主任は呆れ半分の様子で話を続ける。

「アンタが誰かを庇って嘘吐いてるんじゃなきゃ、内丸派にこちらの機密情報売り渡し続けてた裏切り者はアンタってことになるよね。ただでさえ外部に知られちゃいけない情報握られまくってるってのに、そんな人間、生かしとく理由、無いんだよね。」

「…え…え…。」

 田仲の笑顔は引きつり始めた。

「何より、東間会長はアンタみたいな人間を心底嫌いだから。」

 そして主任は、ドローンを田仲の周辺に展開した。

「―それじゃあ、これまでお疲れさん。」

主任はそう吐き捨てると『リベレーター』に似たコントローラーの照準を田仲に向けた。主任の指令を受けたドローンは、搭載された針を一斉に田仲に向けて発射した。

「ヒャッ―」

 それは断末魔であった。無数の針を受けた田仲は、その原型をとどめることなく辺り一帯に散らばった。

 直後、シーガルマンは『波旬』とその擁するドローン3基に向かって突撃を慣行した。シーガルマンは『波旬』に肉薄すると、杖にエネルギーをまとわせ、振り下ろす。バイタルショックである。

 しかし、『波旬』はシーガルマンによるバイタルショック数発をいなすことに成功。さらに、シーガルマンが追加で放った、杖の一撃を回し蹴りで弾くと同時に、右手のガントレットに搭載されていたナイフを展開。シーガルマンの腹にめがけて突き出した。

 シーガルマンはとっさに身体を捻り、辛うじて腹部への刺突自体は回避した。だが、命中自体は避けられず、腹部を逸れたナイフは運悪く装甲の薄い左上腕の腕を切り裂く。蛇の舌の如く波打つようにくねったナイフは、シーガルマンのアンダースーツの防刃性能を突破し、装着者本人の左上腕の肉を抉った。白いマントの一部が鮮血に染まる。

「…ッ!」

 さしものシーガルマンもここで一瞬動きが止まった。そして、『波旬』はその隙を見逃すことは無かった。戦闘装甲左脚のパワーアシストを最大出力に保った『波旬』は、そのままシーガルマンの腹に強烈な蹴りを命中させた。シーガルマンはその衝撃で15m程吹き飛ばされ、コンクリートの地面に叩きつけられた。

「ふぅ…。」

『波旬』は一息つくと、待機させていたドローン3基を再び展開。杖を突いて立ち上がりかけていたシーガルマンの周囲をとり囲む。

「やれ。」

『波旬』はそう言うと同時に、手にしたコントローラーの引き金を静かに引いた。

 シーガルマンを取り囲んだ3基のドローンは、10秒間に渡って無数の針をシーガルマンに浴びせ続けた。そして針の雨が止んだその時、シーガルマンは遂に地面に倒れ伏した。