執筆後記「The Trial of Seagullman」

先日公開された短編小説 『The Trial of Seagullman』の制作メモ・裏話集です。

執筆経緯について

 元々文庫版「八戸夜話」第一巻発刊にあたり、初めて「快鳥童子シーガルマン」に触れる読者の方に対して、
作品の空気感を掴んでもらいやすい短編として「八戸夜話」第一巻冒頭に30頁ほどで収録する方向で執筆を開始しましたところ、ページが増えに増えて現在に至ります。第一巻への収録は諦め、単巻での発売となりました。

 作品自体の意図としては、岐路に立たされた市井の人の前にシーガルマンが現れ、サポートをするという
「シーガルマン」の基本構造を改めて提示しようという趣旨でありました。それはキャラクターショーではどうしても表現しきれない構造であり、「正義の味方」としてのシーガルマン本来の立ち方をようやく表現することができたと思います。(なお、これまでの公演においても直接の描写はされていないものの、「公園の職員」「大学当局の職員」など、毎回シーガルマンが援護している一般市民は必ず存在しています。)

タイトル「The Trial of Seagullman」について

 直訳すると「シーガルマンの試練」のようなニュアンスなのですが、これは
・極限状態の塚田に対しひたすらに「生きる意味」を問い続ける、シーガルマンから塚田への試練
・窮地にある塚田を心身共に無事に救い出すことができるか?というシーガルマンへの試練
・従来のヒーローコンテンツと著しい剥離を見せる「快鳥童子シーガルマン」という作品を
 ご覧になる読者の皆様への最初の試練
 (つまるところ、『ヒーローといいつつこんな作品ですけどホントに大丈夫ですか?』)
・エンタメ性や商業性を放棄することで、活動への支持を失うリスクを取った上で、
 「快鳥童子シーガルマン」の本来の作風を世に提示する制作側の試練
の意があります。

時系列について

 時系列としては、天城慎作が速狩正一郎の死を乗り越えてシーガルマンとなり、
スケルトンがパーシアスエンタープライズ会長のエージェントとして着任するまでの間の期間のエピソードとなります。
それ故に、主要な敵となるのはおなじみヌルズではなく、その前身となるパーシアスエンタープライズ警備部監察班となります。

 また、今作中でも描写がありますが、「シーガルマン」という名前がパーシアスエンタープライズに把握されたのは今回の事件がきっかけとなります。

 現在は非公開となっておりますが、小説版序章来訪編は今作での事件の数か月後となります。

時系列については、更新されました世界観ページも併せてご覧ください。

戦闘装甲<波旬>

今回のメインヴィランとなる監察班主任の駆る戦闘装甲<波旬>
物語上においては、パーシアスエンタープライズ側が珍しく運用してくる戦闘装甲となっております。

なお、映像・イベントでの登場を前提としないことから、全身3DCGでのモデリングによる描画を実施しており、同時にスーツとして立体化する場合にアクションの関係から避けるデザインを敢えてふんだんに盛り込んでおります。

デザインにおいては、仏教やインド神話において波旬/マーラー(後述)の象徴として用いられる、
 ・レイヨウ
 ・ゾウ
 ・ヘビ
 ・ワタリガラス
などの動物のキメラとしてイメージされております。

その名前は、仏教やヴェーダ(所謂インド神話)において言及される悪魔であり、
「魔」という字の由来ともされる
「第六天魔王波旬/マーラ」に由来します。

仏典においてマーラは瞑想中の釈迦を誘惑し、或いは怪物を差し向けその恐怖を以って聖者の堕落を目論む存在として描写されています。この仏典におけるエピソードをメタ的に俯瞰した場合、マーラは「人間自身の中にある欲望、無知、死の擬人化」として見られることが多く、今作における戦闘装甲・波旬においても、塚田が内心に抱えている負の情念を物理的に体現し、支配しようと襲い掛かってくる存在をイメージしています。

結びに

2025年12月現在、諸般の事情により小説版本編の進行を見送っている状態でありますが、
今作「The Trial of Seagullman」はその前日談に位置する正史小説であり、
シーガルマンの基本構造を手軽に(当社比)体験いただけるよう執筆を致しました。
もしよろしければ、この執筆後記をご覧いただいたのちに改めて読み返して頂けると幸いです。

2025年12月
原作者 伊角茂敏

予告

2025/12/5 19:00 当サイトにて公開予定。

今作「The Trial of Seagullman」と表裏の構成となっております。
併せてご覧ください。