
–正伝-
アマギシンサク At Age 8
Chapter 2
令和WX年7月某日、日曜日午後。
八戸駅の近くの土地にはとある鉄筋コンクリ―ト製の2階建てビルが存在する。
このビルは「地球環境救護同盟リリ―フブル―」の八戸支部となっていた。
「リリ―フブル―闘士の皆様、お暑い中、午前中の活動大変お疲れ様でした。」
リリ―フブル―の事務局員と思わしき、品の良い中年男性が、正座している数十名の構成員を前に集会の司会進行をしている。
会場はリリ―フブル―八戸支部の2階に設けられた集会所である。室内は白い清潔そうな壁紙が貼られ、
緑のカ―ペットが敷き詰められており、室内は白い間接照明で照らされている。
「―くしゅんっ。」
暑い屋外から急にク―ラ―の効いた場所に移動したシンサクは、汗を冷やし小さくくしゃみをした。
―パシンッ―
すると、隣に座っている父親は、シンサクの頭をかるくはたいた。
「事務局のおじさんが話してるんだから、静かにしなさい。」
「…はい。」
「それでは、本日の『証明』の時間でございます。本日は、八戸支部所属の闘士、天城保子様の体験談をお話して頂きます。天城さん、よろしくお願い致します。」
司会の進行のもと、集会所の前方に設けられた演台にひとりの中年女性が立った。
「ただいまご紹介に預かりました、天城保子と申します。」
「ほら、お母さんだぞ。」
父親は嬉しそうな顔で、シンサクを小突いた。
「…うん。」
シンサクは、父の機嫌を損ねないように頷いた。
そして、シンサクはそのまま、十数分間母の体験談を黙って聞いた。
「そして、理解してくれた夫も、闘士として一緒にリリ―フブル―の活動に参加してくれるようになり、夫婦共々地球環境救護のために力を尽くせる充実した日々をお恵み頂きました。」
「そのうち、息子にも恵まれ、なんと盟主様直々に『眞朔』という素敵な名前をつけていただきました。」
「私たち夫婦にとってそれはこの上ない喜びでした。今では毎週末親子3人で、こうして皆様と共に活動する日々を送らせて頂いております。」
「盟主様、誠にありがとうございます。これからも、地球環境救護のため、家族でがんばります!」
母の体験談が終わり、会場は構成員たちの拍手で満ちた。
拍手のうち数割は、シンサクと父に向けられた。
父は朗らかな表情で周りに会釈を返している。
しかし、シンサクは浮かない表情で俯いている。
そのうち、母が演台から戻り、シンサクを挟んで父と反対の席に座った。
周辺の構成員は、ニコニコしながら天城家の親子3人を眺めている。
司会の男性は演台に戻ると、再び進行を始めた。
「それでは、今週の盟主様のお言葉を頂戴いたします。皆様、中央の画面の方をご注目下さいませ。」
すると、集会所前面中央に配置されたスクリ―ンに、顔立ちの整ったス―ツ姿の、
50代ほどの男性の映像が映った。
会場の構成員からは、自然と拍手と歓声が起こった。
シンサクの両親も、さぞ尊い物を拝むような目線をスクリ―ンに送っている。
『闘士の皆様、今週も地球のために共に歩んでくださってありがとうございます。リリ―フブル―盟主、嵩本令明でございます。』
低く、よくとおる音声が会場に響く。
会場の構成員はみな一様に、恍惚とした表情を浮かべている。
しかしシンサクはその映像に悪寒と吐き気を覚えた。
身体も少し震えている。
シンサクは、我慢して盟主の映像を見ようとした。
しかし、我慢は数分として持たず、遂に吐き気を催した。
シンサクはたまらなくなって、隣に座る母の服の袖を引っ張った。
「どうしたの?」
母は不思議そうな顔でシンサクに尋ねた。
「…トイレいきたい。」
「今、盟主様のお話だから、終わるまで待って。」
「…さむくて、きもちわるい。」
すると、異変を察知した父は母に小声でたずねた。
「どうした?」
「気持ち悪いって。風邪かな?」
「眞朔、気持ち悪いのか?」
父が不機嫌そうな声でシンサクに聞いた。
「……うん。」
シンサクは、辛そうに返事をした。
「男の子なんだから我慢しなさい。」
父は、冷たくシンサクにそう言った。
「…ぅぷ。」
シンサクは思わず、口を押えた。
すると、父は呆れた顔で母に耳打ちした。
母は、やれやれ、といった表情で、シンサクを立たせて化粧室のある方向を指さし、シンサクを送り出した。
シンサクは小走りで化粧室へと向かった。
両親は、そんなシンサクを一瞥もせず、盟主の映像を恍惚とした表情で眺め続けていた。

–正伝-
アマギシンサク
At Age 8
Chapter 2
令和WX年7月某日、日曜日午後。
八戸駅の近くの土地にはとある鉄筋コンクリ―ト製の2階建てビルが存在する。
このビルは「地球環境救護同盟リリ―フブル―」の八戸支部となっていた。
「リリ―フブル―闘士の皆様、お暑い中、午前中の活動大変お疲れ様でした。」
リリ―フブル―の事務局員と思わしき、品の良い中年男性が、正座している数十名の構成員を前に集会の司会進行をしている。
会場はリリ―フブル―八戸支部の2階に設けられた集会所である。室内は白い清潔そうな壁紙が貼られ、緑のカ―ペットが敷き詰められており、室内は白い間接照明で照らされている。
「―くしゅんっ。」
暑い屋外から急にク―ラ―の効いた場所に移動したシンサクは、汗を冷やし小さくくしゃみをした。
―パシンッ―
すると、隣に座っている父親は、
シンサクの頭をかるくはたいた。
「事務局のおじさんが話してるんだから、静かにしなさい。」
「…はい。」
「それでは、本日の『証明』の時間でございます。本日は、八戸支部所属の闘士、天城保子様の体験談をお話して頂きます。天城さん、よろしくお願い致します。」
司会の進行のもと、集会所の前方に設けられた演台にひとりの中年女性が立った。
「ただいまご紹介に預かりました、天城保子と申します。」
「ほら、お母さんだぞ。」
父親は嬉しそうな顔で、シンサクを小突いた。
「…うん。」
シンサクは、父の機嫌を損ねないように頷いた。
そして、シンサクはそのまま、十数分間母の体験談を黙って聞いた。
「そして、理解してくれた夫も、闘士として一緒にリリ―フブル―の活動に参加してくれるようになり、夫婦共々地球環境救護のために力を尽くせる充実した日々をお恵み頂きました。」
「そのうち、息子にも恵まれ、なんと盟主様直々に『眞朔』という素敵な名前をつけていただきました。」
「私たち夫婦にとってそれはこの上ない喜びでした。今では毎週末親子3人で、こうして皆様と共に活動する日々を送らせて頂いております。」
「盟主様、誠にありがとうございます。これからも、地球環境救護のため、家族でがんばります!」
母の体験談が終わり、会場は構成員たちの拍手で満ちた。
拍手のうち数割は、シンサクと父に向けられた。
父は朗らかな表情で周りに会釈を返している。
しかし、シンサクは浮かない表情で俯いている。
そのうち、母が演台から戻り、シンサクを挟んで父と反対の席に座った。
周辺の構成員は、ニコニコしながら天城家の親子3人を眺めている。
司会の男性は演台に戻ると、再び進行を始めた。
「それでは、今週の盟主様のお言葉を頂戴いたします。皆様、中央の画面の方をご注目下さいませ。」
すると、集会所前面中央に配置されたスクリ―ンに、顔立ちの整ったス―ツ姿の、50代ほどの男性の映像が映った。
会場の構成員からは、自然と拍手と歓声が起こった。
シンサクの両親も、さぞ尊い物を拝むような目線をスクリ―ンに送っている。
『闘士の皆様、今週も地球のために共に歩んでくださってありがとうございます。リリ―フブル―盟主、嵩本令明でございます。』
低く、よくとおる音声が会場に響く。
会場の構成員はみな一様に、恍惚とした表情を浮かべている。
しかしシンサクはその映像に悪寒と吐き気を覚えた。身体も少し震えている。
シンサクは、我慢して盟主の映像を見ようとした。しかし、我慢は数分として持たず、遂に吐き気を催した。
シンサクはたまらなくなって、
隣に座る母の服の袖を引っ張った。
「どうしたの?」
母は不思議そうな顔でシンサクに尋ねた。
「…トイレいきたい。」
「今、盟主様のお話だから、終わるまで待って。」
「…さむくて、きもちわるい。」
すると、異変を察知した父は母に小声でたずねた。
「どうした?」
「気持ち悪いって。風邪かな?」
「眞朔、気持ち悪いのか?」
父が不機嫌そうな声でシンサクに聞いた。
「……うん。」
シンサクは、辛そうに返事をした。
「男の子なんだから我慢しなさい。」
父は、冷たくシンサクにそう言った。
「…ぅぷ。」
シンサクは思わず、口を押えた。
すると、父は呆れた顔で母に耳打ちした。
母は、やれやれ、といった表情で、シンサクを立たせて化粧室のある方向を指さし、シンサクを送り出した。
シンサクは小走りで化粧室へと向かった。
両親は、そんなシンサクを一瞥もせず、盟主の映像を恍惚とした表情で眺め続けていた。
