
–正伝-
アマギシンサク At Age 8
Chapter 3
令和WX年7月某日、日曜日夕刻。
八戸市内の国道を、一台のEV車が走っている。この日は連休中ということもあってか、
交通量も多く、この車も、ちょくちょく赤信号に当たっては停止していた。
車が市内を流れる馬淵川を横断する橋の上で渋滞にかかった時、車内の助手席に座っているシンサクは、まだかすかな吐き気を我慢していた。
シンサクは、窓の外の風景を眺めて気を紛らそうとしていた。
すると、運転席から人工的な香りが漂ってくる。間もなく、シンサクの座る助手席は、夕陽に照らされた白い蒸気で充満した。
シンサクの吐き気には拍車がかかる一方である。
運転席では、父親が機嫌悪そうに電子タバコを蒸かしている。そして、また蒸気を吹き終わると口を開いた。
「なんで我慢できない?父さんも母さんも恥ずかしかったぞ?」
父親は、一層低い、うなるような声でシンサクを問い詰める。
「……さむくって」
シンサクは、数秒考えた後そう答えた。
「言い訳するな!」
父親は、そう言うと左手を振り上げ、シンサクの顔をはたいた。
「……ごめんなさい。」
シンサクは、吐き気と戦いながら、そう答えることしかできなかった。
「…まだ具合悪いのか?」
父親は、変わらず低い声でシンサクに聞いた。
「………うん。」
シンサクは、迷った末に答えた。
「いつも父さんと母さんの言うこと聞かないからそうなるんだ。もっといい子になりなさい。」
父は冷たくそう答えると、再び電子タバコを加え、蒸気を吐き出した。
シンサクは、表情を父に見られないよう、再び助手席の窓の外を眺める。
夕焼けに映える馬淵川の河川敷では、連休中日ということもあってか、
ちらほらと親子連れの姿も見られ、サッカ―をしたり、自転車の練習をする親子もいた。
距離的に表情こそつかめなかったものの、シンサクは吐き気を抑えながらぼんやりと
(楽しそうだなぁ)
そう思った。
信号が変わったのか、父親が電子タバコをしまい車が発進した。
シンサクは反射的に前方を向きなおし、姿勢を整えた。
父は再び口を開く。
「いいか、盟主様はお前のことを特別に扱ってくださってるんだ。お前が生まれた時に『眞朔<シンサク>』っていう名前まで付けて下さって、
それからも八戸に来るたびに、お前を可愛がってくださってるんだぞ?」
シンサクの吐き気が強まった。
「なのにお前は盟主様のお話をきちんときけないのか?」
「………」
シンサクは、とても答えられなかった。
「人の話を聞いてるのか⁉」
父はそう言って激高すると、シンサクの顔を強く叩いた。
「…………ごめんなさい。」
シンサクは、必死に吐き気を抑えて、振り絞るような声で答えた。
「午前中もなんだ‼あんな悪い大人から飲み物なんて受け取って‼盟主様の話を聞いてないからだ‼大体お前は―」
父は、家に着くまでの道中、シンサクの『失態』を次々に掘り返しては糾弾し、そのたびに叩いて、電子タバコを吹かし続けた。
その後、数十分の後ようやくシンサクは家に到着し、
急いでトイレに駆け込むと、胃の中の物を全て吐き出した。

–正伝-
アマギシンサク
At Age 8
Chapter 3
令和WX年7月某日、日曜日夕刻。
八戸市内の国道を、一台のEV車が走っている。この日は連休中ということもあってか、
交通量も多く、この車も、ちょくちょく赤信号に当たっては停止していた。
車が市内を流れる馬淵川を横断する橋の上で
渋滞にかかった時、車内の助手席に座っているシンサクは、まだかすかな吐き気を我慢していた。
シンサクは、窓の外の風景を眺めて気を紛らそうとしていた。
すると、運転席から人工的な香りが漂ってくる。間もなく、シンサクの座る助手席は、
夕陽に照らされた白い蒸気で充満した。
シンサクの吐き気には拍車がかかる一方である。
運転席では、父親が機嫌悪そうに電子タバコを蒸かしている。そして、また蒸気を吹き終わると口を開いた。
「なんで我慢できない?父さんも母さんも恥ずかしかったぞ?」
父親は、一層低い、うなるような声でシンサクを問い詰める。
「……さむくって」
シンサクは、数秒考えた後そう答えた。
「言い訳するな!」
父親は、そう言うと左手を振り上げ、
シンサクの顔をはたいた。
「……ごめんなさい。」
シンサクは、吐き気と戦いながら、
そう答えることしかできなかった。
「…まだ具合悪いのか?」
父親は、変わらず低い声でシンサクに聞いた。
「………うん。」
シンサクは、迷った末に答えた。
「いつも父さんと母さんの言うこと聞かないからそうなるんだ。もっといい子になりなさい。」
父は冷たくそう答えると、再び電子タバコを
加え、蒸気を吐き出した。
シンサクは、表情を父に見られないよう、
再び助手席の窓の外を眺める。
夕焼けに映える馬淵川の河川敷では、連休中日ということもあってか、ちらほらと親子連れの姿も見られ、サッカ―をしたり、自転車の練習をする親子もいた。
距離的に表情こそつかめなかったものの、
シンサクは吐き気を抑えながらぼんやりと
(楽しそうだなぁ)
そう思った。
信号が変わったのか、父親が電子タバコをしまい車が発進した。
シンサクは反射的に前方を向きなおし、姿勢を整えた。
父は再び口を開く。
「いいか、盟主様はお前のことを特別に扱ってくださってるんだ。お前が生まれた時に『眞朔<シンサク>』っていう名前まで付けて下さって、
それからも八戸に来るたびに、お前を可愛がってくださってるんだぞ?」
シンサクの吐き気が強まった。
「なのにお前は盟主様のお話をきちんときけないのか?」
「………」
シンサクは、とても答えられなかった。
「人の話を聞いてるのか⁉」
父はそう言って激高すると、
シンサクの顔を強く叩いた。
「…………ごめんなさい。」
シンサクは、必死に吐き気を抑えて、
振り絞るような声で答えた。
「午前中もなんだ‼あんな悪い大人から飲み物なんて受け取って‼盟主様の話を聞いてないからだ‼大体お前は―」
父は、家に着くまでの道中、シンサクの『失態』を次々に掘り返しては糾弾し、そのたびに叩いて、電子タバコを吹かし続けた。
その後、数十分の後ようやくシンサクは家に到着し、急いでトイレに駆け込むと、胃の中の物を全て吐き出した。
