AA8:C4

アマギシンサク At Age 8

Chapter 4


   令和WX年9月某日、日曜日朝。

天城家のリビングル―ムには曇天ということもあってか、いささかモノト―ンの趣きのある光が差し込み、
室内の花瓶に生けられた百合の花が光に照らされて白く輝いている。
4人掛けの食卓にはまだ朝食一人分の朝食が残っており、その前にひとりの少年がしょんぼりと座っている。

去る9月2日に8歳の誕生日を迎えたシンサクは、食卓に置かれたオムレツを箸でちびちびと口に運びながら、時々緑茶を流し込んでいる。

設置されたテレビでは公共放送のニュ―ス番組が放映されており、海洋資源開発の進歩について報道するリポ―タ―の声が、リビングル―ム一杯に響いている。

しばらくたってシンサクはようやく朝食を完食すると、今度は急須からお茶を湯のみに入れ、またちびちびと飲み始めた。
すると、台所から洗い物をしていたシンサクの祖母が現れた。

「シンちゃん、お父さんとお母さん出かける準備してるでしょ?あなたもそろそろ準備をなさい。」

祖母はそう言うと、シンサクの朝食の器を手際よく下げていく。
確かに、両親の寝室がある2階からは、外出の準備をしているらしい物音がゴトゴトと聞こえて来る。

シンサク憂鬱な表情を浮かべながらお茶を一口すすった。

「お返事は?」

祖母は怪訝な様子でシンサクに尋ねた。

「……でかけたくない。」

シンサクはお茶をもう一口すすった後そう言った。

「具合いでも悪いの?」

祖母はシンサクの額に手を当てると、熱が無いか探りながらシンサクに具合を聞いた。

「…げんき。」
「なら、急いで出かける準備をなさい。お父さんとお母さん、もうすぐお出かけするそうよ?」
「…いきたくない。」

シンサクは、なおも出かける準備を嫌がっている。

その様子を見た祖母は、下げた食器を一旦食卓の上に静かに戻すと、
シンサクの目を見つめて言った。

「お父さんもお母さんもお仕事で疲れてるのに、あなたを遊びに連れて
行ってあげようとしてるのよ?なのに、あなたのその態度はなんですか?」

いささか強い語気である。

シンサクは十数秒沈黙した。
その間、祖母はずっとシンサクの目を見ていた。
そして、シンサクはとうとう絞り出すような声で答えた。

「…あそびになんて行ってない。いつもメイシュさまのところにいってるだけ。」
「…メイシュさま?…なんなのそれは。」

祖母の質問に対し、シンサクは『しまった』という表情を浮かべつつも、
何も答えられなかった。

また数秒間沈黙した後、シンサクは席を立った。

「なんでもない。わがままいってごめんなさい。ジュンビしてきます。」

そういうと、シンサクはリビングル―ムを後にした。
その後ろ姿を、祖母はさらに怪訝な表情で見つめるのであった。

アマギシンサク
At Age 8

Chapter 4


令和WX年9月某日、日曜日朝。

 天城家のリビングル―ムには曇天ということもあってか、いささかモノト―ンの趣きのある光が差し込み、室内の花瓶に生けられた百合の花が光に照らされて白く輝いている。

4人掛けの食卓にはまだ朝食一人分の朝食が残っており、その前にひとりの少年がしょんぼりと座っている。

去る9月2日に8歳の誕生日を迎えたシンサクは、食卓に置かれたオムレツを箸でちびちびと口に運びながら、時々緑茶を流し込んでいる。

設置されたテレビでは公共放送のニュ―ス番組が放映されており、海洋資源開発の進歩について報道するリポ―タ―の声が、リビングル―ム一杯に響いている。

しばらくたってシンサクはようやく朝食を
完食すると、今度は急須からお茶を湯のみに入れ、またちびちびと飲み始めた。

すると、台所から洗い物をしていたシンサクの
祖母が現れた。

「シンちゃん、お父さんとお母さん出かける準備してるでしょ?あなたもそろそろ準備をなさい。」

 祖母はそう言うと、シンサクの朝食の器を
手際よく下げていく。

確かに、両親の寝室がある2階からは、外出の準備をしているらしい物音がゴトゴトと聞こえて来る。

シンサク憂鬱な表情を浮かべながらお茶を一口すすった。

「お返事は?」

祖母は怪訝な様子でシンサクに尋ねた。

「……でかけたくない。」

シンサクはお茶をもう一口すすった後そう言った。

「具合いでも悪いの?」

祖母はシンサクの額に手を当てると、
熱が無いか探りながらシンサクに具合を聞いた。

「…げんき。」
「なら、急いで出かける準備をなさい。お父さんとお母さん、もうすぐお出かけするそうよ?」
「…いきたくない。」

シンサクは、なおも出かける準備を嫌がっている。

その様子を見た祖母は、下げた食器を一旦食卓の上に静かに戻すと、シンサクの目を見つめて言った。

「お父さんもお母さんもお仕事で疲れてるのに、あなたを遊びに連れて
行ってあげようとしてるのよ?なのに、あなたのその態度はなんですか?」

いささか強い語気である。

シンサクは十数秒沈黙した。
その間、祖母はずっとシンサクの目を見ていた。
そして、シンサクはとうとう絞り出すような声で答えた。

「…あそびになんて行ってない。いつもメイシュさまのところにいってるだけ。」
「…メイシュさま?…なんなのそれは。」

祖母の質問に対し、シンサクは『しまった』という表情を浮かべつつも、何も答えられなかった。

また数秒間沈黙した後、シンサクは席を立った。

「なんでもない。わがままいってごめんなさい。ジュンビしてきます。」

そういうと、シンサクはリビングル―ムを後にした。
その後ろ姿を、祖母はさらに怪訝な表情で見つめるのであった。