TTosChapter 10:救出の八秒

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The Trial of Seagullman

Chapter 10:救出の八秒

 塚田と別れたシーガルマンは、1分ほどで、放送で指定されたエリアに到達し、周辺の建物の屋上を確保すると、そこから監察班主任と拘束されている田仲の様子を伺った。

 シーガルマンから観察できる限り、その場にいる人間は5名。

 主任、田仲、主任の腹心らしき監察班員3名。主任は広場を悠然とうろついている。

 救出対象となる田仲は、両手を結束バンドで拘束され、三方を監察班員に囲まれ、うち一人に自動小銃を突き付けられている。

 シーガルマンは念の為に赤外線(サーモ)センサーを起動し周辺を探査するも、目の前の5名以外の人間は敷地内に見当たらず、仮に増援が到着したとしても、塚田と田仲を逃がす前に到着できる範囲に敵は存在しないという結論に達した。

 そこからのシーガルマンの行動は早かった。

 屋上から跳躍し、広場上空に飛び出すと、そのまま上方から田仲の背後に着地。 

 田仲を庇うようにして、その後方で小銃を突き付けている班員との間に割って入る立ち位置を確保した。

 そして、その班員に対し、杖先から放たれる青白い電光状のエネルギー衝撃波―バイタルショック―を見舞った。

 衝撃波をもろに食らった班員は数m吹き飛んだ後気絶した。

 次にシーガルマンは、田仲を挟むようにして左右を囲む班員2名が、吹き飛ばされている班員1名に注意が向いている隙を狙った。

 まず田仲の正面から向かって左側の隊員の小銃を手でつかみ、戦闘装甲のパワーアシストを利用して銃身をねじ曲げ無力化。

 ここで、正面向かって左側の班員が状況を理解し、小銃を構える。

 すると、シーガルマンは小銃を破損した左側の班員の手を取って極め、盾にする形で右側の班員に向けた。

 すると、右側の班員は反射的に、誤射を恐れて小銃の引き金から指を離してしまった。

 シーガルマンはそこを確認すると、間髪入れず拘束していた左側の班員を力任せに右側の班員にぶつけた。

 そして2名が重なる形で転倒すると、シーガルマンは再び杖にエネルギーを集中し、2人の班員をバイタルショックでまとめて無力化した。

 ここまで約8秒。監察班員3名の無力化を終えたシーガルマンは、最後に残った主任に視線をむけつつ、怯えている田仲に声を掛けた。

 「あなたが田仲さんですか。どこでもいいんですけど、隠れててもらえます?」

田仲は状況が理解できないのか、あたりをキョロキョロしている。

 すると、シーガルマンが目で追っていた主任が小型拳銃のようなものを取り出した。もし小型拳銃だとして、その大きさから推察するに、主任の位置的に有効射程範囲ギリギリとは考えられた。

 一刻も早く田仲の安全を確保する必要のあるシーガルマンは、わざと威嚇するように地面に杖を突き立て、田中の目前を舗装していたコンクリートを破壊した。

 すると、田仲は表記できないような悲鳴を上げながら一目散に逃げだした。

 シーガルマンは、逃げる田仲の位置取りを確認しつつ、主任が発砲した場合に備え、その携行武器の射線を予測。田仲がエリアから逃げきるまで、遮蔽物としての役割を全うした。

 そして、シーガルマンは主任に聞こえないレベルの声量で塚田に暗号化された無線を飛ばす。

『お待たせしました。周辺の監察班は無力化して田仲さんを解放しましたので、塚田さんは安心してそのままお逃げになってください。』