
–正伝-
The Trial of Seagullman
Chapter 19:決め手
周辺を探索していた監察班員3名が慌てた様子で広場の方に駆け出していくのを見た塚田は、シーガルマンとの打ち合わせ通りドローンの中継局を探すため動き始めた。
AM5:05 青森県八戸市の港湾地帯某所
パーシアスエンタープライズ所有化学工場敷地内
品質管理棟付近
(さて、碌に通信デバイスも無い状態でどうやって発信源を探そうか。)塚田は監察班に拉致された際、持っていた現金や携帯端末の類を総て没収されている。普段であれば電波の探知くらい朝飯前の塚田であったが、この時は少しばかり困っていた。その時である。
―ゴウン、ゴウン、ゴウン―
塚田の現在地のすぐ近くで、特徴的な轟音が響いた。
(…何かの重機。もしくはハッチの開閉音…。…もしや…!)
塚田は建物の陰に隠れつつ、轟音が響いていた場所を目指して進み始めた。
途中、鬼のような形相を浮かべた主任が広場の方向に全力疾走で塚田の方に向かって来た。
塚田は遂に見つかったかと冷や汗をかき、急いで物陰に隠れた。だが、恐らく立ち止まって注視されれば間違いなく発見されるレベルである。
しかし、主任は相当頭に血が上っているのか、塚田に目をくれることもなく、そのまま広場の方に駆けて行った。
(シーガルマン、上手く全員誘い出してくれたな。)
そして、塚田もシーガルマンの期待に応えようと、疲労困憊しきった身体に鞭打って主任の来た方角に歩みを進めた。
そして、時刻が午前5時8分30秒を回った時の事である。シーガルマンから最後の無線が入った。
『これから先、応答は不要です。塚田さん、後は頼みます。』
(分かった。シーガルマン、君も気を付けて。)
塚田は心の中でそう返した。すると、塚田の現在地点の前方20mから先ほどとは別種の爆音が響いた。
塚田が爆音の方角に目をやると、建物の一つから3基のドローンが離陸し、広場の方に向かって猛スピードで飛んでいった。
(見つけた!)
塚田は全速力で建物に向かった。幸運にも主任が急いで出かけたからか施錠もされていなかった。塚田が建物の中を探索すると、すぐに1立方メートル程度の稼働状態の機器が見つかった。その形状は、塚田が以前資料で確認した、装甲車搭載用のドローンとの通信システムとほぼ一致していた。
「…勝った‼」
塚田は思わずそう呟いた。そして、急いで中継局となっている機器の前に立つと、猛スピードでコンソールを操作した。メニュー画面を起動し、それらしい設定画面を片っ端から開いて探す。そして捜査開始から43秒、塚田はドローンを強制停止させるキルスイッチの画面を発見した。
「―止まれぇ‼」
塚田はそう叫んでドローンのキルスイッチを入れた。